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2012年 2月 02日(木曜日) |
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第五話『大決戦』
「行くよ! ヴァンテ! 全力全開!」
「ガァオオオオオオオオンッ」
神機要塞ブライが両足を大きく振り上げ、巨人と化したライラを押し倒しにかかる。
「ええい、ライラよ! 聖乳を使え、聖乳を!」
巨人化したライラの帽子の中から、鋼鉄参謀ユーミルの声が指示が響く。
「聖乳は……使えません……その……無理です」
「なぜ無理なのじゃ?」
「武器……さっき投げてしまい……ました」
ライラは申し訳なさそうに彼方に転がっているシャダイの聖砲に目を向けた。聖砲を手に取るためにはブライを跳ね除けねばならない。
「こ、このおバカめが~~~ッ」
鋼鉄参謀の絶叫に重なるように、神機要塞ブライがライラの身体をしっかりと抑え、女王の城の外壁へと叩きつける。
「きゃああああっ!」
ライラの悲鳴と共に、轟音を立て巨大な城塞が崩れ落ち、土煙が沸き上がった。
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無言の圧力、格の違いという言葉が現実の圧力となって三人の美闘士を圧倒する。
シギィたちの前に立つのは、彼女たちが倒すべき敵、女王クローデット……。
「貴女を倒し、圧政を終わらせるためにアンネロッテの姉妹たちと参りましたわ」
思わず膝をつきたくなる衝動を抑えシギィは聖炎の槌鉾を構えた。
「お、お覚悟を……」
震えながらミリムが超振動剣に手を伸ばし、ルナルナが二人の背後で妖艶に舞う。
「ちょ、ちょっとルナルナさん、何を?」
「何って踊ってるのよ? 見て分からない」
踊りで相手の士気でも削ぐつもりなのだろうか、冷や汗を流すミリムをよそに、ルナルナが肢体をしならせて戦いの舞いを踊る。
「なめられたものだな……魔人アンネロッテではなく、おぬしたち程度で、余を倒せると思うてか」
サンダークラップに紫電が走る。
来る! シギィはとっさに槌鉾を股間に挟み、大きく胸を突き出した。『審判』の聖なるポーズ、この姿を見た相手は己の罪を悔い、審問官に目を向けることすらできなくなる。
だが、クローデットは躊躇うことなくシギィに向けて雷撃を放った。
「神聖力が効かない! そんな、馬鹿な……」
サンダークラップから放たれた紫電が女王の間を縦横無尽に走り、回避不能の雷撃となってシギィの身体に直撃する。
「残念だったな、我が雷撃に悔いるような過去はない」
雷撃を受け苦悶の表情を浮かべ膝を屈したシギィを嘲笑し、クローデットは新たな獲物へと目を向ける。
これは戦いではない、一方的な狩りだ。
「次はお前だ。異郷の踊り手」
「あらあら、女王様、踊りを最後まで見ていただけないなんて、ちょっと無粋じゃない?」
ひらりひらりと舞いながら、ルナルナはサンダークラップの切っ先から逃げていく。
「時間稼ぎの見え透いた手には乗らぬ。それに、踊りを楽しむ気分ではないのだ」
クローデットは冷静に告げ、再び雷撃を放った。雷鳴が女王の間に轟くよりもはやく、ルナルナは体から伸びた触手をひくひくと痙攣させながら床に崩れ落ちた。
「ひゃうううっ、し、しびれるぅ……ジンジンきちゃって、クセになりそう」
全身をしびれさせながらも、なお踊ろうとしているのか、床に腰を擦り付けながらルナルナが悶える。
「残るはおぬしだけだな……」
「ひ、ひいっ! わ、わたしだけ、なんですかっ!」
一人残されたミリムは、恐怖に身を震わせながら叫んだ。
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「いきますよぉ、奥さぁ~ん!」
「私もいかせていただきますよ。奥様」
二体の召喚獣がアンネロッテに迫る。
「くっ、こいつら、ただのぬいぐるみじゃない?」
ベルフェの炎、ドゴールの溶解液によって、すでにアンネロッテは鎧を失い、半裸に近い姿となっている。
「オホホ、冥界の伯爵を甘く見ないでいただきたいものですわねぇ……」
「冥界……ならば、あの力を使うしかないか」
アンネロッテは眉を顰め、自分の内側から溢れ出してくる暴力的な魔力を押さえ込む。
「く……、ああああああっ」
「おやおや、お嬢さん、お身体の調子がよろしくないようでございますね」
「では私たちで美味しくいただいてしまいましょうか?」
フワリフワリと近づいていたベルフェとドゴールが不意に動きを止める。
二体の召喚獣を見つめているのは、紫がかった銀髪を漆黒に染めたアンネロッテの深紅の瞳だ。
「ど、どうかしましたか? 召喚獣さん?」
「お、奥様……この方はどなたなのかしら」
「奥さん、私たち、聞いていませんでしたよ」
召喚獣の声にわずかな怯えが混ざる。
「「アンネロッテが冥界の血を引く者だったなんて!」」
声をそろえ、召喚獣がアルドラの側へと引き下がる。
「残念ながら……違う」
苦悶の表情を浮かべながらも、アンネロッテはアルドラをまっすぐに見つめた。
「私は……魔人でもなければ、冥界の魔物でもない。この大陸を……平和を愛する一人の美闘士だ!」
叫びながらアンネロッテは剣を振り下ろした。
「ならば、どうして戦争を止めないのですか?」
アルドラが櫂で受け取め尋ねる。
「女王が間違っているのなら、それを全力で正すのが臣下というもの。我が義父はそれを行い、女王に倒された。正道を示すことが私の使命」
「正道?」
「貴女はなぜ女王に味方する?」
「旦那様との平穏な生活を守るためです」
「ならば、私たちがここで戦い合う必要はない」
「で、でも、叛乱軍は占領した街から男女を問わず略奪し邪悪なハーレムを作っていると聞きました」
「誰から聞いたか知らないが、私はそんなハーレムとやらには興味はないし、作る気もない」
アンネロッテの言葉に、今度はアルドラが戸惑いの表情を浮かべる。侍女の言葉は嘘だったのか? 水の街に現れたアンネロッテは偽者だったのか?
「もう一度問う。貴女はなんのために戦うのか?」
なんのために……自問するアルドラをアンネロッテの赤い瞳がまっすぐに見つめる。
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「そのまま押し倒して! いけ! いけ! いっちゃえ!」ユイットの命じるまま、ライラを押し倒した神機要塞ブライが容赦のない攻撃をライラに打ち込む。
「きゃっ! 痛いッ! 痛いですよぉッ!」
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ライラが悲鳴を上げるたびに、少しづつ光が飛び散り、巨人化していた身体が小さくなっていく。
「神の奇跡を見せんかーっ!」
「そ、そんなこと言われても、痛いものは……きゃあっ! やめて! そこは弱いのですぅ!」
「ええい! フォーリングなんとかとか、ホーリーなんとかは出せんのか!」
「や、やってみます!」
ライラの身体が黄金色に光り輝きだす。
「ホーリーダァーイブッ!」
本来なら上空からの急降下で威力を増す技だが、ブライに押し倒されているため、地上から打ち上げる形となる。威力も当然低くなるが、ブライの装甲を貫くには十分なものだ。
「ひゃわわわっ! ヴァ、ヴァンテェッ!」
凄まじい衝撃に振り落とされまいとユイットがヴァンデにしがみつく。
「でかした! もう一発じゃ!」
「ダメです……もう力がでません……ああ……」
「こ、この一発屋めーッ!」
鋼鉄参謀の罵倒が響き、ライラの姿はブライが巻き起こす土煙の中へと消えていった。
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戦場に到着した女王軍が見たもの。それは叛乱軍の首魁アンネロッテと戦う一人の美闘士の姿だった。
「おい、あれは……アルドラ様じゃないのか?」
今はクローデットの配下とはいえ、前女王であるアルドラの時代に兵士となった者たちの数は決して少なくはない。
「間違いない。姿は変わっているが、アルドラ様だ」
兵士たちは歓声を上げた。
現女王によって禁じられたクイーンズブレイドを思わせる戦い方で、かつての主人であるアルドラが先頭を切って叛乱軍の首魁と戦っているのだ。
「アルドラ! アルドラ! 我らがアルドラ!」
兵士たちの歓声が、アルドラの記憶を呼び覚ます。
「私は……なんのために……」
目を閉じたアルドラの脳裏に、幼い頃の情景が浮かぶ、自分の手を掴む小さな手……、優しく微笑む母親の姿……、今はもう遠く、存在しない過去の情景。
「そうだわ。私には、確か妹が……」
母が襲われ、アルドラは妹と共に逃げた。だが、気がつくと握っていたはずの妹の手のぬくもりはなく、彼女はひとりぼっちになってしまっていた。
妹を探すために召喚した冥界の住人デルモアに言われるままに女王となり、クイーンズブレイドを続けた。
いつの日か、妹が現れることを信じて……。
「思い出しましたわ……全てを」
アルドラが両腕を広げ優しく微笑む。その微笑みに吸い寄せられるようにアンネロッテも剣を下げると、彼女の豊かな胸元に顔をうずめた。
「アンネロッテ……私は妹に、貴女に会うために戦いつづけていたのです」
アルドラの穏やかな声と柔らかなぬくもりが、アンネロッテの魔人としての力を溶かしてゆく。記憶の奥底に眠っていた懐かしい名前と感覚がよみがえってくるのをアンネロッテは強く感じた。
「アル……ねえさま……」
意識せずに自然と漏れた名前を受け、アルドラはアンネロッテを自分の胸に押し付けるようにしっかりと抱きしめた。
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記憶を取り戻した前女王アルドラとアンネロッテの戦いは終わり、女王軍と叛乱軍の対決も終わりを迎える。
この戦いを背後から操っていた鋼鉄参謀ユーミルを探すユイットとヴァンテ。二人がそこで観たものは…?
次回『黒幕』活目して待て!
ストーリーテキスト:沖田栄次、イラスト:織田non
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